体を動かす、ものを考える、成長する、泣く、笑う、怒る。毎日の暮らしの何気ない動作は全て「タンパク質」によると言ったら驚かれるでしょう。実にタンパク質は生物すべての生命現象を担う基本的な物質なのです。
人間に限らず、生物は全て細胞が集まってできています。細胞は生命の最小単位で、一つ一つの細胞は生命活動に不可欠な3つの能力を備えています。一つは自分と同じ細胞を作る「自己複製能力」、次に栄養分を取り入れ「新陳代謝」を行う能力、最後に外界の変改に合わせて内部環境を「調整」する能力です。細胞はその70%が水分です。タンパク質は約15%と水に次いで多い成分で、これら3つの細胞機能をつかさどる重要な働きをします。
ところで、人間は昔から動物の肉や内臓を食べてきました。これらにはタンパク質が豊富に含まれてます。栄養学や医学の無い時代でも、私たち祖先は経験的に、あるいは動物的なカンで、生命を繋ぐため栄養的に優れた食品を見つけ出していたのです。
動物の肉や内臓にタンパク質が多いのは、それらの期間もまたタンパク質でできているからです。筋肉、内蔵、被布、紙、骨、歯、腱や髄など、およそ体のどの部分をとってもタンパク質が存在します。血液やリンパ液などの体液、身体の機能を調整するホルモン、食べ物の消化・吸収をはじめ体内の化学反応には不可欠な酵素、光や味、匂いなどの刺激を受け取るレセプターなど、すべての生命現象はタンパク質が中心となります。
地球上には様々な生命が生きており、ヒトもその仲間にすぎません。思考や情動など複雑そうに見える生命現象も、実のところ体内にある物質同士の相互作用に基づくわけで、その中心がタンパク質です。タンパク質は英語で「Protein」。「第一人者」を意味するギリシャ語に由来するネーミングは、まさに生命現象を支える主役にふさわしいでしょう。